通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのある取引事例

建設業法の改正に伴い、通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのない取引が義務化されました。

その中、国交省より、通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのある取引事例がいくつか例示されましたので業務の参考としてください。

以下にそれらの事例を挙げさせていただきます。

労務単価の据え置き

事例①

長年の取引関係のある注文者と受注者は、予め建設工事の契約にあたって見積りに用いる労務単価を取り決めているが、数年にわたって労務単価に関する協議の場が設けられず、適正な労務費となるような労務単価の水準に見直されないまま、その労務単価を用いて見積りのやり取りを行っている。

事例②

注文者と受注者が、初めて建設工事の取引を行うにあたって、注文者、受注者のいずれかが作成している労務単価を用いることとされたが、その労務単価は数年にわたって適正な労務費となるような労務単価の水準に見直されないまま、その労務単価を用いて見積りのやり取りを行っている。

事例①、事例②に関しては、

建設業に従事する労働者の賃金水準は上昇傾向にあり、公共工事設計労務単価も毎年見直しが図られている。

それらの背景の中、労務単価を見直さず、いわば据え置き状態となっている場合は、昨今の建設業界の賃金情勢から鑑みて、適正とは言えない状況となっている場合がございます。

主旨である、適正な労務費の確保とならない恐れがあるため注意が必要です。

一律一定比率等の減額

事例③

適正な労務費を踏まえた見積りに対して、合理的理由や根拠がなく一定の比率を乗じて減額を行い、本来施工に必要となる適正な労務費とはならない見積りのやり取りを行っている。

事例④

適正な労務費を踏まえた見積りに対して、合理的理由や根拠がなく端数調整により減額を行い、本来施工に必要となる適正な労務費とならない見積りのやり取りを行っている。

事例③、事例④のように、建設業界での取引上、総計から一定の値引きや端数調整処理なども、本来の必要となる労務費の額へのしわ寄せ、額が下回る可能性があることから、適正な取引行為となるよう改善が必要です。

予定額からの指値

事例⑤

注文者が設定した工事予算額に見積りの総額を合わせるために、その予算額から逆算して、合理的理由や根拠がなく、本来施工に必要となる労務費とならない額を計上し、適正な労務費が確保されていない見積りのやり取りを行っている。

事例⑥

注文者が複数の建設業者から徴収した見積りのうち最安値の見積額を一方的に請負代金とするため、当該最安値の見積額の提出者以外の者に、本来施工に必要となる適正な労務費よりも減額した見積りとするような変更を依頼し、適正な労務費が確保されていない見積りのやり取りを行っている。

事例⑤、事例⑥に関しても、商習慣上あるお話しです。

一定の予定額があり、その範囲で納めなければならない場合や、相見積もりでの更なる取引額交渉は、通常必要と認められる労務費へのしわ寄せに陥りやすく、労務費が確保されないことや適正な労務費の額を著しく下回るおそれに繋がる可能性があることから、適正な取引行為となるよう改善が必要である。

適正な労務費による見積りを行った者を受注者として決定することが適切である。

取引関係維持等を意図した減額

事例⑦

長年の取引関係のある注文者と受注者が、取引関係を維持することを理由として、本来施工に必要となる適正な労務費から合理的理由や根拠がなく減額して、適正な労務費とならない見積りのやり取りを行っている。

事例⑧

注文者と受注者が、新たな取引関係の構築を目的とし、本来施工に必要となる適正な労務費に比べて、合理的理由や根拠がなく減額して、適正な労務費とならない見積りのやり取りを行っている。

これらもよくある事例かと存じます。

長年の取引相手との関係性から、一定の値引きを行っている場合や、新規の取引先として将来的な取引を考慮した根拠のない値引き対応です。

その結果、適正な労務費とならない見積りとなり、適正な労務費が確保されないことや通常必要と認められる労務費の額を著しく下回るおそれに繋がる可能性が発生します。

工事条件を考慮しない価格設定

事例⑨

注文者と受注者が、工事条件に応じて額を変えることが必要な労務費について、工事条件を考慮せずにあらゆる工事において、常に同じ歩掛の値を用いて、適正な労務費とならない見積りのやり取りを行っている。

事例⑩

注文者と受注者が、労務単価については適切な職種の公共工事設計労務単価を踏まえた内容としているものの、工事条件を考慮せずに、同種工事に比べて実現困難と思われるような歩掛を計上することにより、適正な労務費とならない見積りのやり取りを行っている。

建設工事については、現場ごとに様々な条件があるため、労務費を構成する歩掛も、通常はその条件に応じて異なるものであり、過去の同種工事の実績や職種分野別の「労務費の基準値」などと比較のうえで、適正な歩掛に基づいた労務費を見積書に計上することが必要であります。
工事条件を考慮せずに、合理的理由及び根拠のない歩掛を基にした、適正な労務費とならない見積りは、適正な労務費が確保されないことや適正な労務費の額を著しく下回るおそれに繋がる可能性があります。

まとめ

このように、いくつかの事例を紹介しました。

商習慣上、従来通りの取引を行っていると知らず知らずのうちに適正な労務費の確保ができていない場合がございます。

値引き対応は商習慣上否定するものではございませんが、適正な範囲で合理的な積算を行った上で、見積り計上を行うよう努める必要がございます。

法令に違反することはさることながら、労働者の適正な賃金にも影響します。建設業界の担い手不足の今、今一度適正な労務費の確保に努めましょう。

 

本コラムについて詳細についてはこちらもご参照ください。

参照元参考資料 国交省:通常必要と認められる労務費を著しく下回るおそれのある取引事例集

 

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【建設業法】労務費の基準について 中央建設業審議会

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